自己啓発について(令和元年度「能力開発基本調査」個人調査より) 吉田健司
自己啓発について(令和元年度「能力開発基本調査」個人調査より) 吉田健司
吉田 健司
2月に内閣府の平成30年度年次経済財政報告(以下白書)より社会人が自己啓発を行うことの効果についての分析を取り上げた。今回は、厚生労働省から公表されている令和元年度「能力開発基本調査」の取りまとめ結果より自己啓発を取り上げたい。
「能力開発基本調査」の用語の説明では、自己啓発は次のように説明されている。
労働者が職業生活を継続するために行う、職業に関する能力を自発的に開発し、向上させるための活動をいう(職業に関係ない趣味、娯楽、スポーツ健康増進等のためのものは含まない。)。
調査報告の概要によれば、平成30年度に自己啓発を行った労働者は全体では29.8%で、正社員が39.2%、正社員以外が13.2%である。
自己啓発の実施方法は、「ラジオ、テレビ、専門書等による自学、自習」を挙げる者の割合が最も高く、正社員(36.7%)、正社員以外(31.6%)で、次の通り続いている。
・「eラーニング(インターネット)による学習」(正社員27.5%)、(正社員以外28.0%)
・「社内の自主的な勉強会、研究会への参加」(正社員25.9%)、(正社員以外23.9%)
・「社外の勉強会、研究会への参加」(正社員24.2%)、(正社員以外17.0%)
・「民間教育訓練機関(民間企業、公益法人、各種団体)の講習会、セミナーへの参加」(正社員23.3%)、(正社員以外16.7%)
など
自己啓発における問題点は、正社員、正社員以外のいずれも「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」(正社員55.0%、正社員以外35.5%)が最も高く、特に正社員の割合が高くなっている。
自己啓発の時間を創出する工夫や啓発のための教育が重要であるとあらためて思う。
自己啓発の「啓発」は論語(述而)が出典であるが、孔子の言葉は人が成長するために心がけるべき多くのことを教えてくれる。論語は自身の経験と照らし合わせながら何度も読み返す古典である。