心の教育への思いが中国古典を学ぶ動機に・・・ 吉田健司
心の教育への思いが中国古典を学ぶ動機に・・・ 吉田健司
吉田 健司
私は、社会人になって中国古典百語百話(PHP研究所)を読み、多くのことを学んだ。そして百語百話に刺激を受けて、岩波文庫の古代中国の古典を何年もかけて読破した。原文である漢文を読むことは難しいが、読み下し文、現代文(口語訳)、解説を読むことで基礎的な理解は得られる。当時私が読んだ本は、論語、大学・中庸、易経、春秋左氏伝、孟子、孫子、荘子、荀子、列子、韓非子、史記列伝、史記世家などで、蔵書は30冊を超えている。
最も再読した韓非子は、中国古代の法家の思想を伝える書とされるが、人間学の書としても興味深い内容である。企業の中間管理職の立場にあった私は、口語訳を読むだけでは物足りず、漢文を読むことにチャレンジした。まず、高校生用の漢文の参考書を買い求め、漢文を勉強し直した。その後、約1年かけて朝の通勤電車の中で読み切った。このころから中国の古典だけでなく、古代中国の歴史や考古学的な資料にも関心を深めるようになった。
岩波文庫の後は、古代中国に関する講談社学術文庫を読むようになった。講談社学術文庫の蔵書も30冊を超えている。さらには、明徳出版社の中国古典新書、明治書院の新書漢文大系、平凡社の東洋文庫、中公新書、徳間書店の中国の思想、プレジデント社の武経七書、講談社の中国の歴史、その他いくつかの文庫、新書などから興味を持った本を読んできた。
また、古代中国を舞台に数多くの小説を執筆されている宮城谷昌光氏の愛読者であり、何度も読み返す作品も多い。最近では、異なる作品であっても、地理的関係と時の流れを総合して登場する国・地域や人物をイメージできるようになり、新たな世界を楽しんでいる。
國分康孝氏は著書「カウンセリング心理学入門(PHP新書)」で、「心の教育とは思考(考え方)の教育、感情(感じ方)の教育、行動の仕方の教育の三つの総称である。」と述べている。20年ほど前になるが、新たな組織づくりや人材育成に責任ある立場にいた私は、心理学の入門書や文庫、新書を読み、企業人が自己啓発として学ぶべき心理学を考えていた。そんな時に心の教育の大切さを学び、その思いが中国古典を学ぶ動機につながったと、長年積読状態の「カウンセリング心理学入門」を読み返して新たな気づきを得た今日この頃である。