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ルーチンワークは創造的な仕事を駆逐する 吉田健司

2017/11/27
吉田 健司

「グレシャムの法則」は、イギリスの グレシャムが唱えたとされる「悪貨は良貨を駆逐する」という法則である。ある社会で材質の悪い貨幣と良質の貨幣とが同一の価値をもって流通している場合、良質の貨幣は使用せずに保持されたり、溶解されて地金にされたり、輸出されたりなどして市場から消えて、悪い貨幣が流通するという法則である。

では、「計画のグレシャムの法則」とはどのような法則だろうか。これは、1978年に「経済組織における意思決定過程の先駆的研究」によりノーベル経済学賞を受賞した米国のハーバート・A・サイモンが唱えた法則で、「ルーチンワークは創造的な仕事を駆逐する」というものである。ルーチンワーク、すなわちいつも通りの定型的な仕事量が多いと、長期を想定したり、抜本的に仕事のやり方を変更したりといった創造的な仕事が、後回しにされるという警鐘である。

働き方改革を考えるにあたっても、「計画のグレシャムの法則」は、重要な示唆を与えてくれる。日常業務が多忙という理由で、それを改善する工夫を後回しにしたり、そのために必要な学習を後回しにしたり、本気で取り組まなかったりする状況に陥ってないだろうか。
そのような組織や人は、まず多忙な日常を「見える化」するのが良いと思うが、その結果をどのように分析するかも考えておかなければならない。私はそのためのキーワードの一つが判断力だと思っている。日常業務を大小、さまざまな判断の連続であると捉えると、多忙かどうかは、仕事の絶対量だけでなく、判断の拙劣が大きく影響するのではないかと思うからである。
仕事における判断は、意思決定という言葉におきかえて学ぶと良いと思う。そのため、組織の意思決定過程を研究したハーバート・A・サイモンが著した「経営行動(ダイヤモンド社)」を、私は愛読している。

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