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「人材力」に思う 吉田健司

2015/06/22
吉田 健司

平成26年版「労働経済白書」の分析テーマは「人材力の最大発揮に向けて」である。「人材力」という言葉が気になり調べてみたが、明確な定義を見つけることはできなかった。
行政文書では、文部科学省が、平成25年に「人材力強化のための教育戦略」という資料を公表している。日本人としてのアイデンティティを持ちつつ、高付加価値を創造し、国内外で活躍・貢献できる人材の育成に向けてとるべき成長戦略と大学の役割について記述されている。
また、総務省は地域活性化の基本的な要素である人材力の強化を図るため「人材力活性化」に向けた取組みを行っている。これは「地域力創造に関する有識者会議」において、同じような経済的条件、自然的条件下にあって活性化している地域とそうでない地域の差を生じさせている大きな要因として、「人材力」が指摘されたことをうけてのことのようである。
「労働経済白書」では、「人材」を我が国が世界に誇る最大の資源と認識し、全ての人材が能力を高め、その能力を存分に発揮できる「全員参加の社会」の構築が必要との観点から、企業における人材マネジメントに着目した分析を行っている。その分析結果の1つとし、多様な労働者に積極的な雇用管理を行い、就労意欲を引き出す人材マネジメントが、企業を成長させることがあげられている。企業を取り巻く競争環境の変化の中、正規雇用労働者のみならず、様々な雇用形態で働く労働者が増加しているが、雇用形態にかかわらず、積極的な雇用管理に取り組んでいる企業では、労働者の定着率が高くなるとともに、労働生産性や売上高経常利益率 も高い傾向にあるとされている。
これは、2008年の中小企業白書の、労働生産性を意識している企業は、意識していない企業に比べて売上高経常利益率が顕著に高い傾向に見られる、労働生産性の向上が企業業績を向上させる効果を有することを示唆している、という分析結果とあわせてみると面白い。
しかしながら、私の経験から思うに、多様な労働者に積極的な雇用管理を行い、就労意欲を引き出すことは、簡単なことではない。「人材力」の重要性は様々な視点から認識されている通りだと思うので、まずは、自社の自身の人材マネジメントが適切か、日ごろから考えることが大切ではないだろうか。

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