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H社についての思い出の一コマ 【長屋勝彦】

2014/07/14
長屋 勝彦

今週はスケ―ジュールにゆとりがあり、11月15日講演予定の原稿を書き始めた。タイトルは事例にみる中小企業のものづくり成長戦略である。対象企業は、顧問先3社であるが、そのうちの一つ目の事例としてH社について半日をかけて書いた。

 書いくうちに走馬灯のごとくH社とのいきさつが思い出された。とりわけ、三つのことが今でも写真の一コマのように鮮明に記憶の中にある。

 今から28年前 K社勤務時にプラスチックレンズのOEM先として資金面でも支援しH社の設立を図った。その後、しばらくしてレンズ事業から離れたため、当社との関係は途絶えたが、その後平成9年、中小企業診断士として独立し現在まで顧問としてかかわっている。

 独立当初は暇な時間が多く、当時最難関(競争率10倍)といわれた中小企業ベンチャー振興基金の新製品開発補助金の申請支援にあたった。その時のH社研究者の申請文書が理解しにくかったが、何故・どうして、具体的にはという問答を繰り返し、当補助金対象のレンズ製作の肝はH社が発見した錯体の発見にあるということを明確にした申請書を作成し、採択された。

 又、Hの売上の75%をしめる委託先企業の倒産に遭遇し窮地に追い込まれた。その時もいろいろの対応策を考え議論したが、H社レンズの納入先である倒産企業の顧客の商権譲受が最良の方策との結論に達し、倒産企業の顧客と直接取引するための交渉を、倒産企業を通じて行った。交渉の結果、2年という限られた期間であったが顧客と直接取引することができた。又、当取引終了後の生産の急激な落ち込みに対応するため、新製品として開発した偏光レンズが立ち上がるまでの間、雇用調整助成金を活用した全従業員の一時帰休による生産調整を行い、急場をしのいだ。社長からの後日談として一時帰休明けにはすべての従業員が出社したとのことであり、従業員の愛社精神と社長の厳しさのなかの優しさを感じた。

 最近では、レンズ業界のチャンピオン企業であり当社のナンバーワン顧客である外資系企業の日本法人N社から事業提携、資本参加の申し入れがあった。N社は外注先企業の系列化を図っている企業である。社長方針として系列に入る選択をせず、イコールパートナーとして日本N社株式の一部取得を前提とした交渉を行った。結果として、交渉は思惑通り不成立に終わったが、当交渉に対しては契約書のチェック、交渉の立会いにあたった。

 以上のようなことが頭をよぎったが、当社の、経営理念、経歴、ビジネスモデル、環境分析、戦略、中小企業診断士としての支援ということで講演テキストを作成した。現在はH社社長に当テキストの草稿をお願いしている。

 独立開業からH社と付き合って、17年、H社の誕生から今日までをみているが、その時々のこと、補助金申請時の問答、当時売上の75%を占めた企業の倒産時の社長、倒産企業及びその得意先企業とのやりとり、N社の提案に対する対策、交渉が一コマの写真のように目に映る。

 社長も今年で還暦を迎えた。一時、会社で働いていた社長の息子も今年の春戻ってきた。社長は5年後には引退するという。それまで、H社に対し何ができるかを考えたが、環境は変わるものであり、その変化に応じて考えればよく、今、決めつける必要はないとも思っている。

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