恩は後輩に返しましょう 【岩本 亨】
恩は後輩に返しましょう 【岩本 亨】
岩本 亨
中小企業診断士として独立したばかりの頃なので、10年くらい前(2004)の話。私は中小企業診断士の勉強会である「YCS(安田コンサルティングセミナー)」に参加していた。主宰者の安田平八先生(故人)は、中小企業診断士の大先輩で、当時75歳ながら精力的に後進育成に尽力されていた。YCSの定例勉強会でご自分の体験としてお話しになった内容を紹介したい。
大学時代にお世話になった先輩に「御恩は必ずお返しします」と言ったところ、「私に返さなくても良いから、その分、後輩に返しなさい。先輩に返したところで繋がってはいかない。私もずいぶん先輩にお世話になった。それを今、あなたたちに返しているだけだ」と返事されたとのこと。
「恩は受けた方にお返しするのが当たり前」と思っていた私は、その考え方に感動した。それ以来、恩を受けた先輩諸氏へは感謝をしつつも、「後輩に返す」ことを心掛けている。
先日、YCSの後輩が出産を目前にして、勤務していた税理士事務所を退職した。私もお世話になった事務所で、しかも私が紹介したて就職してもらったこと。彼女のご主人が中小企業診断士受験の際に、私とご縁があったこと。等々で以前より親しくお付き合いさせていただいている。そこで、私の妻とともにお疲れさま&出産頑張っての意味を込めて招待し、4人でささやかな会食をした。
非常に楽しいひと時を、幸せいっぱいの夫妻と過ごし、4人とも終始笑顔だった。会食が終わって「安田先生の教えの通り、後輩に返してね」と言って解散した。
ところが、しばらくして、「お教えは重々承知ながら、ほんの御礼の気持ちです」とのメッセージとともにお礼の品が送られてきた。「あの夫婦らしいね」と妻と苦笑しながらも、出産祝いに我が家でホームパーティーでも開こうかと思案中である。