稼働率分析に思う 【長屋勝彦】
稼働率分析に思う 【長屋勝彦】
長屋 勝彦
A社は治工具、試作部品等の精密切削加工を行っている中小企業であり、顧客は高精度の品質とともに短納期を要求する機械製作企業である。このため、A社は個別受注生産方式による単品生産を行っており、段取り時間、手待ち時間が多く、切粉を出し実際に加工している機械加工時間が短く、稼働率向上が課題となっている。
この度、今年度の国の中小企業施策「モノづくり補助事業」に応募し、採択され、その一環として同社の稼働率分析を実施することとなった。
分析手法としては、ストップウオッチにより作業者の作業時間、作業動作を分析したり、作業者の作成した作業日報により分析したりする方法があるが、今回は正確性と客観性(見える化)の観点からビデオカメラを設置し作業者の作業状況(作業時間、作業動作)を分析することとした。
この方式を実施するに当たり、複数の友人に意見を聞いた。
「作業状況をビデオカメラにより監視されている」という考えから作業者にはプレッシャーになることも予想されるが、自動車製造業では実際の作業現場に導入されている、「作業中は生産性向上を目的として会社のために働いているのであり非効率な作業があればビデオカメラを診てリーダーがコメントをするのは必要なことである」という考えもある、「但し生産性向上の成果は会社のためだけではなく、作業者にも配分されるという考え方が管理者、作業者の双方の根底に必要である」というコメントであった。
A社の社長、工場長には、このようなコメントを説明し、了解の上、改善策実施前、改善策実施途上、改善策定着後の3回について行うこととなった。
稲盛氏の著書「働き方」にあるように、「ベストを尽くすのではなく、完璧を追及する心構えで仕事に対応することが必要である」ということを実感した。
このような考え方を作業者の方も理解し、自ら改善に取り組んでもらえるように願っている。