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公平性の確保~アポイントは先約優先で~ 【長屋勝彦】

2012/04/09
長屋 勝彦

20代後半の話しである。学生時代に能楽研究会に入り、謡、仕舞に明け暮れていたこともあり会社に入社しても、しばらくは会社の謡曲クラブで謡を続けていた。謡曲クラブでの練習は月に1回、18時頃から会社の厚生寮(四ツ谷)で専門家の先生による指導により行われたが、終了後酒宴となり、それでも満足できない時は2次回に発展することも間々あった。この他、週に1回昼休みを利用して会社の先輩の指導を受けていた。昼休みの練習は他にやることが多く気が進まなかったが、指導をする先輩が直属の上司であり、練習をさぼる訳には行かず、出席率は高い方であった。

 

そんなある日、午前中の就業時間が過ぎたので会社の食堂に行こうとしていた矢先、担当役員の方が、直属の上司に、「藤井君、飯でも食いながら話をしたいことがあるんだけれど」という指示めいた問いかけをされた。これに対し、「今日は食事をしてから謡の練習をする予定がありますので」と上司は答えた。「ああそうか」と言って直属の役員はその場を離れた。

 

当時は高度成長まっただ中であり、仕事優先の時代であった。この話を聞いて以来、その後営業の仕事に携わり、人と接することとなるがが、今日まで公私ともに、先約優先の考えで仕事をしている。

 

直属の上司は社交的タイプの人でなく、どちらかといえば愚直の感じのする、とっつきにくい印象を受けるタイプの人であったが、いまでもこの場面を時々懐かしく思い出す。仕事の面で、お二方とも、洞察力のある方で、物の考え方、見方について多くのことを教わった。

 

今後も、公私の区別なく、人の分け隔てなく、自分の軸がぶれない、凛とした生き方をして行きたい。この考えに賛同し仕事をしている会社時代の後輩、中小企業の社長がおられるのはうれしい限りである。

余談であるが、直属の上司はその後専務を歴任後、関連会社の社長をされた。担当役員の方は京都大学工学部で電気を専攻され方で、後のドル箱製品クレスチン育ての親である。お二方とも鬼籍の人である。

以上

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