鉄は熱いうちに打て 【長屋勝彦】
鉄は熱いうちに打て 【長屋勝彦】
長屋 勝彦
アンドリューカーネギーの「逆境と挫折からの利益」の講話をテープで聞いた。その内容は、「失敗を知るから成功を知る。トラブルは喜んで受け入れよう。逆境はチャンスを呼び込む女神である。」というものである。
聞き終わった後、「挫折を味わったことがあるか。失敗したことがあるか。」という質問をし、受講者全員で話しあった。失敗については、「不良品を作ったり、納期遅れを起こしたりすることなど仕事の上での失敗はしょっちゅう起こしているが、気にしても仕方がない。気分転換が大切であり失敗したことは忘れようとしている。」、「失敗により滅入ってしまうことの方が怖い。」、挫折については、「挫折は味わいたくない。」、「立ち直るのが大変である。」という意見が多かった。
ちなみに広辞苑では、「失敗とはやってみたがうまくいかないことであり、挫折とは計画や事業などが中途でくじけ折れることである。」とある。大半の受講者は「挫折は失敗より受けるダメージが大きいので味わいたくない。」ということらしい。えてして、何事もそつなくこなそうとする者が多く果敢に困難な仕事に挑戦しようとする者は少ないのが当企業の社風である。これでは、ミクロンオーダーの精度を要求される機械加工の仕事はできない。失敗を重ね挫折を味わいながら挑戦しワンランクアップの技能に挑戦するチャレンジ精神が必要である。このようなチャレンジ精神は平穏を求める者、仕事に慣れきった者いわゆるサラリーマンには馴染まないし、このような者で構成される企業は創造的なものつくり企業への道は遠い。
その意味で、チャレンジ精神が旺盛で、仕事に興味を持ってくれる人が多い企業は将来性がある。今年も経営は苦しいが社長の英断により中小企業ではあるが数名の新入社員(高校卒業)を採用した。入社数年間は一人前の技能者として使えないが、技能を教えながら(小職の役割ではないが)、仕事の楽しさと達成感を経験してもらうとともに、精神的なタフさをどのようにして身につけさせるかが課せられた課題である。一緒に座禅にでも行うかと思う今日この頃である。