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                   ~自己実現の後に~ 長屋 勝彦

2015/04/13
長屋 勝彦

 ある研究会で自己成長について10分間スピーチをすることになった。80歳に手がとどこうとする自分にとって今後の自己成長とは何かと改めて考えてみた。成長といってもその指標は何か、収入か、所得か、顧問先かといったことがあげられるが、いずれもそうではない。自分にとっての指標は長年従事している製品開発に必要な知識(R&D‐knowledge)かと思う。何故なら、製品開発に必要な知識による中小企業支援によりその企業の成長支援に貢献できるからである。

 このような観点からこれまでの自分の軌跡を振り返った。プロダクトライフサイクルでいう導入期は、化学品製造会社に入社し生産管理、経営企画の仕事をしていた頃(~1970年)が事業計画作成と作成した計画の進捗管理に関する知識の習得に役立ったというとで、導入期かと思う。

 そして、開発室でPCB代替品の製品開発に携わった頃から成長期に入り、開発した製品を営業部で販売しオイルショックを機に月商3億円の売上をあげ、相応の利益も獲得した時期が成長期のピークかと思う。成長期(1971年~1977年)では、マーケティングの知識はもとより化学品を開発するために有機化学物質の構造解析、製造方法にまで立ち入り技術陣と議論できたことが、大いにその後の化学品の製品開発を行う上で役立った。

 その後、大阪営業所で管理者として営業業務に従事した後、東京に戻り再び合成樹脂製品の開発販売を担当した。この時期には光学材料(プラスチックレンズ)、圧電性プラスチックフィルムの製品化という、それなりの成果をあげたが、そのいずれもが成長期に習得した知識の活用であり、新たな知識の習得は無かった。この時期が成熟期の前期(1978年~1995年)かと思う。

 1996年中小企業診断士として独立しこれまでに習得した知識を活用し、現在は中小企業の成長支援、再生支援にあたっているがこの時期が成長期後期(1996年~)かと思う。このままの状態で推移すればやがて先細りになり衰退する。しかし、本年に入り中小企業診断士受験時に学んだ情報システム構築の手法、以前の会社の退社数年前に習得した目標管理のための人事評価に関する手法を活用し人事評価制度の構築にあたることとなった。当事業で成果をあげれば人事評価に関する知識創造につながり、衰退期にさしかかった成長曲線が再び新たな成長期に入る。そしてこの成果を活用すればそれなりの収益を上げることができると思う。

 一方、自己実現の後は何であるかついて考えた。自己実現の後は真・善・美という人もいる。インターネットで検索すると他人実現という言葉があった。はからずも、久し振りで訪問した元顧問先の社長から、浜松ホトニックの社長が理事長の光産業創生大学院大学で光技術を学ぶ間、出世払いで当社長の会社の人材育成教育に当たって欲しい旨を懇願される。世のため人のために尽くすのが人の人たる由縁かと思い、この申し出を赤ひげ診断士になったつもりで受けようかと思う。
                                                                                                         以上

カテゴリー:  経営情報

仕事に愛があれば・・・ 【岩本 亨】

2015/04/06
岩本 亨

3月初めのNHKテレビ「プロフェッショナル仕事の流儀」という番組で、宮城県秋保温泉にある「主婦の店 さいち」というスーパーマーケットを紹介していた。題して「二人の約束 魂の惣菜 食品スーパー経営者/佐藤啓二・澄子」。

自家製おはぎを1日平均5,000個売る店。今までの最高は25,000個とのこと。お総菜や弁当も自家製でおいしそうだった。社長と専務のご夫妻がスーパーマーケットに業態展開し、価格競争に疲れ果て、経営危機を乗り越えてたどり着いた今の経営方針。安売り競争するのではなく、お客さんに喜んでもらえるオリジナルなものを提供すること。

先週、義父の三回忌で岩手に行く予定があったので、仙台で途中下車し、レンタカーでお店を見に行った。おはぎの棚の前には人だかりができていた。その手前に陳列されているお惣菜はみんなおいしそうで、しかも安い。個食に対応して一人分の惣菜が100円~売っている。お弁当やちらしずしも魅力的だった。

店で販売されていた「惣菜弁当の殿堂 味付けは親心、盛り付けは活け花の心得 主婦の店さいち惣菜弁当全集」という書籍を購入したが、まさに「味付けは親心、盛り付けは活け花の心得」は的を射た表現と感じた。

6億円くらいの年商の半分を惣菜で稼いでいるという。平均的なスーパーの惣菜の構成比が10%くらいなので突出している。秋保温泉周辺の商圏人口は4,000人くらい。その商圏内のお客さんだけではなく、私のように県外から買いに来る人や観光客も来店しているらしい。訪問当日も駐車場には警備員が二人いて、対応していた。県外ナンバーもちらほらあった。

おはぎを2種類、惣菜を3種類、ホタテご飯といなりずし、高菜おにぎりを購入。完全に買い過ぎだと思いつつ、近くの公園でおはぎと惣菜を頂いた。やさしい味。スーパーやデパ地下の惣菜と見た目も味も違っている。それぞれから作った人の愛が感じられた。

東京に戻って、近所のスーパーで惣菜を見たが、同じようなメニューなのに、なぜこんなに違うのだろうか?と驚いた。盛り付けにこだわらないからか全くおいしそうに見えない。だから買いたくならない。「さいち」では見た瞬間に食べたい気持ちになった。視覚から食欲の中枢に情報が伝わるような実感(?)があった。同じようなものなのに、もったいない話である。

お客さんの声を聴いてメニューや味付けに反映させる。おはぎを始めたのも、「帰省してくる孫におはぎを食べさせたいけど、家では難しくて作れない」というおばあさんの声だったという。

品質にこだわり、顧客を大事にし、価格で勝負しないけど結果的に低価格で提供している仕組みを目の当たりにして、苦境の原因を環境のせいにしている経営者に見に来て、自分の経営姿勢を振り返って欲しいと感じた。

私自身の仕事に対する取り組み姿勢についても振り返る良い機会となった。

初登板のごあいさつ  ~テーマは「人」~ 【吉田健司】

2015/03/24
吉田 健司

私は、昨年の3月末に37年間務めた会社を定年退職し、第二の人生を歩き始めて一年が過ぎようとしている。のんびりしたいと思う一方で、企業戦士だったころのように自分で自分を追い込んでしまう、そんな日々を過ごしている。今回から月一回のペースでブログを書く予定である。幹になるテーマは「人」としたいと考えている。

まず「所属する組織は、人を育てる組織か」と問いかけてみたい。自ら考え行動することが求められる時代ではあるが、「自分自身はできているか」と問いかけてみたい。この問いかけは、ブログを読んでくれているあなたへのものであり、私自身へのものだ。

私は、自問自答することを大切にしてきた。常にインプットを心掛け、思考を繰り返す、頭に浮かんだものを大切にする、自分の気持ちや思いを大切にする。待つことを優先しなければならないときもある。そのようなときは意識的に考えることはしない。自分の中から自然に湧き上がるものを待つ。それが意欲であったり、ひらめきであったり、気づきであったりする。そしてある時ふと思いつき、イメージが具体的になったものを「思い付きノート」に記録してきた。記録をキーにアイデアを企画に昇華したり、あるいは没としたりしてきた。

そんな私が会社時代に意識していたことに、「自分の言葉で伝える」、「意味を伝える」、「相手にとってわかりやすく伝える」がある。「言うは易く行うは難し」である。今も習得したとはとても言えないレベルである。ただ、何十年も「意識し、学び、試み、反省する」を繰り返してきたので、そんな経験の一端を、今後ブログで書きたいと考えている。

カテゴリー:  人材育成, 吉田健司

思考は夜開く 【長屋勝彦】

2015/03/09
長屋 勝彦

昨日、クライアントと仲間から提案書作成とカリキュラム作成の依頼を受けた。一つ目はD社の人事評価制度の仕組みの構築、二つ目はYさんからの経営革新のカリキュラム作成である。D社社長とは茨城県中小企業振興公社の仕事をしていた時からの既知の仲であり、先月東京都中小小企業診断士協会の実務従事事業を指導員として診断した企業である。

 前者は来週末のD社の役員会にかけるため、その前日までに人制度構築に関する提案書提出を作成して欲しいとの依頼である。社長は、「私も土日にも働いているから、あなたも経営者であれば土日で提案証を作成することができる。」ということで来週末の役員会までに間に合わせ提案することを約束した。

 社長の提案に対して、ざっくりとした金額を提示したが高いというイメージを持たれた。その額は中小企業でなければ当然受け入れられる妥当な額である。社長は前回依頼した中小企業診断士の報酬を25千円/日で引き受けてもらったが、今回の提案の報酬が高いのではと考えておられるようである。これに対し、「公的支援機関からの支援も前提にベストプライスにより作成するが、これからの成長を期待するのであれば提案の内容をみて欲しい、安かろうの提案ではなく、貴社にジャストフィットした提案をしたい。」という話をした。又、ジョークを交え、「企業として飛躍するためには一流を目指すべきで、何時までもラーメンライスではなく、たまには寿司、フランス料理も食べる必要があると思う。」というようなことを話した。社長とはざっくばらんに話ができる間柄であるということを想定しての話である。これに対し、「そうかもしれない、しかし、今景気が良いといって財布のひもを緩めるわけにいかない、オリンピック後は落ちることが明白だから。」いう言葉を聞いた。商工会議所、中小企業活性化センターと相談しベストプライスを出すにしても、「オリンピック後を考えると今は景気がいいからという気持ちにならない、気持ちを引き締めなければならない。」といわれた社長の言葉は耳に残った。

 二つ目のカリキュラム作成はS商工会議所のカリキュラム作成で経営指導員向けの経営革新に関するものである。こちらの方は話の内容を電話で聞きながら大体の構想を固めることができた。それでも研修時間5時間という短時間に必要な内容をどう盛り込むかは工夫が要ると思った。カリキュラムは帰宅後作成に取り掛かり途中まで作成し、多分寝ている間にアイデアが出るだろうと思い就寝した。

 案の定、二つのことが気になりいつもより早く目が覚めた。起床しすらすらと完成させることができた。そして、9時早々に千葉県中小企業経営支援センターに連絡し人事評価制度構築についての支援の可能性を聞いた。当センターの話では支援は可能であるが、その前に身元を確認したいのでD社から当センターに直接電話をして欲しいとのことであった。早速D社にその旨を伝えた。その時社長に、週末の土日で提案書の作成を約束したが、週明けには出張が入っているので納期までの提出は困難である旨の話をした。社長から「早急に電話する。納期のことは気にしないで欲しい。」ということを言われた。D社長は創業者でワンマン経営者である。役員会は社長の裁量で処理されると思った。しかし、翌日、先に話した見積の内容(企画書)はメールで伝えた。

 創造性開発のオーソリティ元奈良女子大の中山正和教授は、「アイデアだしは寝ている間に出てくる。それまでに、物事を縦から、横から、ななめから眺め、それでも、でなければ寝ることである。アイデアは寝ている間に熟成する。」といわれた。又、指導者の間では「血の小便が出るまで努力せよ。」と言われている。血の小便はしたことがないが要するに物事に集中して全霊を傾けて取り組めということかと思う。

 70歳をはるかに過ぎた身ではあるが、アイデアだしは年を越えて必要であり、アイデアがでたときの感動は素晴らしいものであると思うこの頃である。人事制度構築は診断士となってしたい仕事の一つであるが、今回はそこ(感動)までには至っていない。
以上

カテゴリー:  経営情報, 長屋勝彦

社長のやる気スイッチはどう入ったのか? 【岩本 亨】

2015/03/02
岩本 亨

とある地方の温泉旅館。客室数は15室。ここ数年毎期赤字が続いていた。貸出している金融機関担当者A氏は、以前は頻繁に旅館を訪れ、社長に経営状況を確認したり、具体的な取り組みをアドバイスしたりしていた。しかし、いくら言ってもB社長が代わらないので半ばあきらめて、ここ5年くらいは放置していた。

最近になってB社長から「業績が上がってきたので、一度見に来て下さい」と連絡があった。A氏が半信半疑で訪問したところ、部屋はきれいになっており、露天風呂付きの部屋もできていた。「借入金の返済猶予をしていながら、隠し財産でもあったのか?」と疑心暗鬼になり問いただした。B社長は、「金が無いから、家族でできる所まで改装し、プロにしかできない箇所は引退した大工さん等を自分で探して、個別にお願いして安く対応してもらった。1年に1室ずつのペースでコツコツ進めている。旅行代理店との付き合いも一切やめ、ネットエージェントとに絞り込んだ。口コミ評価ポイントが徐々に上がってきて、それが励みになっている。」そんな答えが返ってきた。事実確認のためお忍びで泊まりに行き、深夜自分で重機を操作している社長夫妻を確認した。

A氏がB社長に、「あんなに言うことを聞かず、やる気もなさそうだったのに、何で変わったの?」と聞いたところ、B社長から「娘が大きくなるにつれ、近隣の旅館が怪しげな商売をしているのを見て『ウチも同じなの?』と思われるのが嫌だった。また、息子にやる気のない父親と見られるのも忍びないと思った。それがきっかけでとにかくできる所まで自分の力で考えて、工夫してやってみようと思った。それを続けていくとお客さんにも喜んでもらうようになった。仕事が面白くなってきて、一生懸命に取り組んでいくうちに黒字化してきた」と答えが返ってきた。

変われば変わるもので、最近はB社長から時間に関係なく電話がかかってくるようになった。先日も深夜0時過ぎに携帯が鳴った。出てみるとB社長から「先月の試算表をまとめたら、計画以上に黒字になっていたので嬉しくて電話しました!」と弾んだ声が。既に寝室にいたA氏は「嬉しいけど、深夜は勘弁して・・・」と悲鳴を上げていた。

今日聞いたばかりの「やる気になれば想像以上のことができる」という実話を披露させていただきました。いくら周りが口を酸っぱくするくらいにアドバイスしても、本人がその気にならないと変わらない。その気になりさえすれば、この例の様に劇的な変化をもたらすことも有りうる。組織の中の人の活かし方にも通ずる話ですね。