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いまこそメンタル面でのタフさを~長屋 勝彦~

2016/04/11
長屋 勝彦

 アンドリューカーネギーの「思考は現実化する」というテープレコーダーを基にして人間教育を目的とした研修を始めて久しい。

 一言でいうと、人として自身のあるべき姿をビジョンとして描き、そのビジョンを実現するための計画を立て、いかなる苦難に遭遇しても信念を曲げず成し遂げようとするための心構え、取り組み方についての研修である。

 この研修は、10数年前ある県の中小企業の販路開拓の仕事で中小企業を訪問した際、従業員の人間教育を依頼されたのが発端である。

 その企業の社長は20歳代後半で独立し、バブル崩壊、リーマンショックを体験しながら今日まで経営されている苦労人である。

 若い時に経営の勉強のため大枚(100万円以上)をはたき買い求められたテープを題材として研修の度に一巻ずつ聴き、感想文を書いてもらい仕事の取り組み方について討議している。

 そのお蔭で、ビジョンを描く、計画を立てる、強い信念をもってことにあたるということは表面的には理解しているが、現状ではカーネギーのいう高いビジョン、強い信念、不撓不屈の精神が身についておらず仕事に具現化できていない。

 現状は残業で凌ぎその結果として疲労の蓄積、会社の業績低下をきたしているという状況で、研修時間が無駄であるという文句が幹部社員の中から出る始末であり、労働時間短縮のための作業改善策がでてこない、いわば負のスパイラルにあえいでいる状況である。

 たとえ、月1~2時間の研修時間を省いても能率改善にあたらず、仕事の仕組の見直し、異次元での能率向上策の発見に向けた追及が要求される。

 前者の仕事の仕組の見直しはある程度の目途はあるが、後者の異次元での能率向上は妙案がなく、カーネギーのいう飽きることなく考え続けなければならない。

 おそらく、この妙案を発見した企業が生き残り、できなかった企業は市場から退場という運命をたどることになるであろう。

 このような状況下、何ができるかを問い続けるわが身である。
                                                     以上

平成24年度「能力開発基本調査」について 吉田健司

2016/03/27
吉田 健司

厚生労働省から平成24年度「能力開発基本調査」の取りまとめ結果が、公表されている。平成18年以来毎年実施されている調査で、次の3つの調査で構成されている。
・企業調査:企業の能力開発の方針などを調査
・事業所調査:事業所の教育訓練の実施状況などを調査
・個人調査:労働者の教育訓練の実施状況などを調査

厚生労働省のホームページによると、「能力開発基本調査」の目的は、国内の企業・事業所と労働者の能力開発の実態を、正社員、正社員以外別に明らかにすることである。正社員とは、パートタイム労働者などを除く、雇用期間の定めのない労働者で、正社員以外とは、「嘱託」、「契約社員」、「パートタイム労働者」などの名称で呼ばれている人で派遣労働者と請負労働者は含まれていないと、定義づけられている。

この調査結果の内、事業所調査による人材育成の課題と個人調査による自己啓発の課題について比べてみた。
人材育成に関して何らかの「問題がある」と回答した事業所は68.7%である。問題点として最も多い回答は「指導する人材が不足している」(51.3%)であり、「人材育成を行う時間がない」(44.5%)、「人材を育成しても辞めてしまう」(40.4%)と続く。
一方、自己啓発について何らかの問題があるとする者は、正社員では79.4%、正社員以外では72.7% となっている。自己啓発における問題の内容( 複数回答) は、正社員では「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」が56.5%で最も高く、「費用がかかりすぎる」(34.4%)、「どのようなコースが自分の目指すキャリアに適切なのかわからない」( 20.1%)、「家事・育児が忙しくて自己啓発の余裕がない」( 18.5%) などが続いている。正社員以外では「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」( 34.8%)を挙げる割合が最も高く、「家事・育児が忙しくて自己啓発の余裕がない」( 32.5%)、「どのようなコースが自分の目指すキャリアに適切なのかわからない」( 23.3%)、「自分の目指すべきキャリアがわからない」( 20.9%) などが続いている。
調査結果から、時間的な余裕がないこと、キャリア支援が必要なことなどを認識することができた。自分に足りないスキルをどのように身につけたらいいのかわからない、そもそも自分に必要なスキルがわからないという声も聞こえてきそうである。課題発見、目標設定、実行、状況確認というキャリア開発のサイクルを人材育成の現場でどう実現するか、そのために私自身に何ができるか、あらためて考える機会となった。

受講生から学ぶ~環境対応の必要性~長屋 勝彦

2016/03/14
長屋 勝彦

先月からサービス業のマーケティングマネジメントというテーマで早朝研修(というよりセミナ)を開始した。クライアントの企業には当日電車等の事故によるリスクを想定しその分費用がかかるが前泊をお願いしている。

 受講者の方にもその旨話し、気を引き締めて話を聴き質問があればその場で手を挙げ納得するまで質問するよう話した。

 研修の内容は、受講第一回はマネジメント概要、第二日の今月はマーケティング概要である。講義に先立って、これまでの振返りとして分自身の強み、課題(弱み)を認識し、自分のしたいこと(WILL)、今できること(CAN)、シナケレバならないこと(MUST)について発表してもらった。

 受講者の方には、実家も同業の職業を営んでいるので、現在の店で修業し、行く行くは独立したい、そのためにマーケティング、経営を勉強したいという方が多かった。クライアントの責任者の方の話では今回の研修は全額企業負担ではなく、一部受講者負担ということでもある。それだけにオーバーな言い方ではあるが一字一句聞き漏らさない、時間とカネを無駄にしないという姿勢が受講者の方からうかがえた。

 セミナではマーケット、マーケティングの日本語、英語の単語の意味について説明し、コトラー、ドラッガーのいうマーケティングについて問答方式で質問、返答を繰り返した。

 今回の講義で、今後の生き方として若い(多分20歳代後半~30歳代前半)方がボランティアとして今の仕事を活かして社会に貢献したい旨の話があった。

 その方は世のため人のために役立ちたいという思いで話されたかと思う。その方の話から、当企業が属する業種は店舗内のみでのサービスであるが、移動サービスが事業として成り立つのか、対象顧客層は、事業領域は、どのようなビジネスモデルとなるのかといったことが頭をよぎった。素晴らしいビジネスモデルになるような気がした。

 この意味からも今回のセミナーは新鮮であった。来月は受講者の方とどのような一問一答ができるかを思うとわくわくする気持ちとなる。
以上

カテゴリー:  経営情報

身近な「限界集落」

2016/03/01
岩本 亨

私の故郷は島根県江津市の山間の集落である。最近は仕事の関係で月に12回実家に泊まって、独居老母の手料理を頂いている。先日実家周辺を散歩していて空家や無くなってしまった家屋が多いことに気付いた。

この集落には、冠婚葬祭の互助組織である「組」があり、実家は三組に属している。この組は、私が高校生だった35年前には9軒で構成されていた。N吉屋、K村、N本屋、O野屋、K野屋、S屋、T須、K摺、YK屋(それぞれ屋号があるのでそれで表記してみた)。このうち空家になっているのはN本屋、K摺、YK屋。家屋が無くなってしまったのがO野屋、K野屋である。今は9軒中4軒のみ居住している。高齢になって別の場所に住む子息と同居されることになったり、病気で入院されていたり、お亡くなりになって住む人がいなくなったりという事情だが、ほとんどが次の世代が同居していないためである。N吉屋、K村の住人は独居老人である。あと数年でこの2軒も無くなってしまうかもしれない。

「限界集落」という言葉を「wikipedia」で検索してみると、以下の説明(部分引用)がある。

過疎化などで人口の50%以上が65歳以上の高齢者になって冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になっている集落を指す、日本における概念。

中山間地域や離島を中心に、過疎化・高齢化の進行で急速に増えてきている。このような状態となった集落では集落の自治、生活道路の管理、冠婚葬祭など共同体としての機能が急速に衰えてしまい、やがて消滅に向かうとされている。共同体として生きてゆくための「限界」として表現されている。

 

少子高齢化や過疎化が社会問題として取り上げられて久しいが、身近に現実があることを改めて認識した。適切な対応をしないと我が故郷も消滅してしまうかもしれない。企業において経営者の交代の遅れが指摘されており、国も「事業承継対策」として、各都道府県に「事業引き継ぎセンター」を設置するなどしているが、なかなか実効は上がっていないようである。将来を見据えた具体的な取り組みが求められるところである。

韓非子を読む 吉田健司

2016/02/21
吉田 健司

先日、上野の東京国立博物館平成館で開催されていた特別展「始皇帝と大兵馬俑」を鑑賞してきた。私は、古代中国の歴史や思想に関する本を好んで読んでいるので、大変興味深く意味のある時間を過ごすことができた。
自称企業戦士だったころ、私は中国の古典の中でも特に「韓非子」の愛読者だった。「韓非子」は、韓の王族に生まれ、荀子に学んだ韓非の著作とされる。中国古代の法家思想の代表的な書で、韓非は法治主義による政治改革を秦の始皇帝に説き、始皇帝の法思想に影響を与えたとされる。
「韓非子」は、人間学の書ともいわれる。君主が大衆を支配するための説からは、「人」について多くを学ぶことができる。人間は自分の利益を追求する存在であるという韓非の非情な人間観から学ぶことも多い。
君主の心得、君主が臣下を充分に働かせる要点、臣下の任用と待遇についての注意、君主に対して人臣がおこなう八つの悪事、破滅に至る十の過ち、重臣の専横がはびこる体制への批判、国が亡ぶ兆候、歴史故事などへの非難、世間で賞賛される八種の人物への批判、学者・雄弁家などへの批判、権力者に進言するその説き方の難しさなどを説いていて、人の集まりである企業、変化する時代に直面している企業の経営に多くの示唆を与えてくれると思う。
「韓非子」を出典とすることわざなども興味深い。守株(しゅしゅ)、あるいは株を守るは、古い習慣に捉われて時勢に応じた対処のできないことのたとえとされる。 ある時、農夫が畑を耕していると兎が切り株にぶつかって死んだので、農夫は難なく兎を得ることができた。 それ以来、仕事をせずに再び兎が切り株にぶつかるのをいつまでも待っていたという故事から。
現実を鋭く見つめる「韓非子」は、一読する価値のある書であると思う。