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バーナードの「組織の3要素」に思うこと 吉田健司
吉田 健司
アメリカの経営学者チェスター・バーナードが定義したとされる「組織の3要素」について、私は疑問に思っていたことをそのままにしてきた。
「組織の3要素」とは、組織が成立するために必要な以下の3つの条件のことで、異なる言葉で表現されることがある。
・共通目的、組織目的、共通の目標
・協働意思、貢献意欲、協働意欲
・コミュニケーション
私の疑問は、上記の3要素に順序があるかということである。
バーナードの「組織の要素は、(1)伝達(コミュニケーション)、(2)貢献意欲、(3)共通目的である。」(C.I.バーナード著「新訳 経営者の役割」(山本安次郎・田杉競・飯野春樹訳ダイヤモンド社))という1文が気になっていたのである。
同書は、難解な部分も多くあるため通読するのがやっとで、答えを探しながら読む余裕はこれまでなかった。今年は顧問先での経営管理の研修テキストを作成していたこともあり、組織の3要素に関する部分を、時間をかけて何度も読み返し、(1)伝達(コミュニケーション)、(2)貢献意欲、(3)共通目的の順序は、組織がどの様な時に成立するかという論述における順序であると、やっと理解することができた。
組織は2人以上の協働体系といわれることもあるように、まず複数の人々がいて、そこにコミュニケーションが存在することからはじまるという考えに至り腹落ちした。
こうしてみると3要素の表現や順序は一つの型ではなく、使う側の意図ではないかと思えてくる。私も今まで明確な意図をもって使ってきたかと自省している今日この頃である。
経営体質改善のためのデベート研修~長屋 勝彦~
長屋 勝彦
これまでアンドリュー・カーネギーの「思考は現実化する」という約50巻余りあるテープを聴いた後、会社・職場のビジョン・問題点などを話し合ってきたが、「受講者のいうことがマンネリ化した、建設的意見がでてこなくなったので意味がないのでは」という社長のコメントもあり、今月からテーマを「デベート」にし有望な若手社員を対象に行うこととした。
「デベート」とは議論するという意味である。
デベート研修では一つのテーマを決め、そのテーマを肯定する側と否定する側に分け各々の立場からその理由を述べ、お互いに論戦を戦わし(議論し)、優劣をつけるといった進め方をする。
デベート研修の目的は、論理的思考力(テーマに対する肯定又は否定する理由とそのテーマを実行した場合のメリット又はデメリットを考える)及び交渉力(相手方に肯定又は否定する理由とその策を実行した場合のメリット又はデメリットを説明し相手方と議論する)の向上にある。
当社で「デベート」研修を行う理由は、上司の言うことに対し社員が自分の意見を堂々と述べることができず、自分が正しいと思っても引き下がる場面が日常しばしば見られ、そのことが職場のモチベーションを低下させていると感じたからである。
当社でもそうであるが一般的に中小企業は社長の力が強く、そのことがマイナスに作用した場合は経営に悪影響を来す懸念があり、社員にもの申す力を付けさせようとしたからでもある。
社員には上司の命令であるからと言って卑屈にならないで物事を理論的に考え、その考えを上司である相手に主張する社風としたい。
基より、役目柄上司である社長にも論理的思考に基づく政策の実行を提言するのが使命である。
そのようなことを考え今月のデベートのテーマは、「我が国の原発は廃止すべきである」というテーマとした。
短期的に当社の体質は改善できないと思うが、諦めずに愚直に実効することが使命であると考えるこの頃である。
以上
能力開発と労働生産性の関係 吉田健司
吉田 健司
2015年6月のコラムで、2008年中小企業白書の「労働生産性を意識している企業は、意識していない企業に比べて売上高経常利益率が顕著に高い傾向に見られる」という記述を紹介した。この労働生産性(付加価値/ 労働投入)について、平成28年度労働経済の分析(厚生労働省)がテーマに取り上げている。内容で興味深いのは、労働生産性の上昇には、人的資本形成の一つである能力開発が重要であると確認している点であるが、今回は、企業の能力開発への関与のあり方は大切であると、私があらためて認識させられた分析結果を二つ紹介したい。
一つ目は、「OJT の実施とOFF-JT の実施には相乗効果が認められ、両者共に積極的に実施していくことが高い労働生産性を達成するには重要である」という分析である。二つ目は、「企業が積極的に労働者の能力開発に関与しているところほど労働生産性が高い傾向がみられる」という分析である。
企業主体で労働者の能力開発方針を決める場合には、企業の考えにあった訓練が行われ、より効果的な能力開発が行われるというメリットあるとされる。また、従業員一人ひとりの能力・資質を更に高め、能力を最大限発揮させることは、労働生産性の向上のみならず企業の持続的な発展にも寄与するとされる。
この能力開発の考え方について、平成28年度能力開発基本調査(厚生労働省)の調査結果を見ると、正社員に対する能力開発の責任主体については、「企業主体で決定」するとする企業は24.4%( 前回25.3%)、「企業主体で決定に近い」とする企業は51.7%( 前回51.3%) となっている。
平成28年度労働経済の分析では産業別の分析、企業規模別の分析も行われているので、一読をお薦めする。
~中小企業の人事評価~中小企業には人事評価制度は不要か! 長屋 勝彦
長屋 勝彦
今年で2回目の実務従事事業の指導員を行っている。今回は浜松で昭和40年創業のプラスチックのフィルム、繊維のラミネート、コーティング、印刷のOEM受託加工を行う企業である。社長は2代目で、京セラ稲盛会長の説くアメーバー経営の影響を受け奮闘しているが、構造不況業種の上、円安、消費税値上げの影響を受けかろうじて黒字を計上するというものの苦戦を強いられている。
今回の診断は、経営を安定化させるためOEM受託企業から脱却し、プラスチックフィルム、繊維系素材を用いたバッグの新規事業開拓に注力化するのか、新加工機の導入により加工体制の充実を図るのかについての方向性についての診断である。初日の社長ヒヤリングの時、メンバーの一人が当社の目標管理と人事評価について質問した。多分、稲盛会長の説くアメーバー経営の影響を受け個人別目標管理と人事評価制度を導入していると思ったからであると思はれる。
質問に対し、社長は、「グループとしての目標管理は行っているが人事評価は現在検討中である。優秀な人材をひきとめるためには個人別目標管理と人事評価制度は必要である。」という答えであった。
これに対し、他のメンバーが、「従業員が30名程度(当社の規模)の企業では社長が最も従業員を知っており、必要がないのでは?」とコメントした。
人事評価の目的は従業員の能力を適正に評価することだけではなく、人事評価を通して従業員にやる気を持たせることが必要である。そのためには、「例え、少人数の企業であろうとも人事評価マニュアルを作成し、作成したマニュアルに従って従業員の能力、業績について評価し、評価した結果について従業員に説明し、納得を得る必要がある。」と考えている。
概して、中小企業にはワンマン社長が多く、社長が鉛筆をなめて一人で評価を行っている企業が多いが、目標管理制度を導入し、従業員にやる気を持たせることにより全社員が協働し企業を発展させていくと考えた場合、人事評価もPDCAサイクルを回すことにより共有化、透明化を図って行く必要があると思う。
なお、主題の当社社長の診断ニーズ(要望)についてはメンバーの行う診断を見守りアドバイスしていきたい。
以上
「サービス労働の生産性」への思い 吉田健司
吉田 健司
前回のコラムで書いた中小企業白書のほかに、私がバックナンバーを大切にしている月刊誌がある。2000年10月から月刊誌となったDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューである。それ以前は隔月刊ダイアモンド・バード・ビジネスであった。私の書斎には1999年9月以降のバックナンバーが揃っている。このバックナンバーは、積読状態の書籍を久しぶりに通読で読み直す私流の再読をこれまで2度行うなど、資料として読みかえすことも多く貴重な情報源である。
最近の掲載論文で興味深かったのは、26年前のピーター・F・ドラッカーの論文である。DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2017年7月号に、「名著論文再掲」として掲載されている。興味を持った理由は、テーマが知識労働やサービス労働の生産性向上だからである。以前コラムにも書いたが、会社勤務時代、製造業の生産管理をサービス業に活かすための創意工夫に取り組んだ経験から、ドラッカーの示す生産性向上のためのステップは共感できることが多く、さらに今まで気が付かなかった示唆を与えてくれた。
1例を紹介すると、ドラッカーは継続学習の必要性を主張している。私には、学習する組織に近づけるために、新たな知識やスキルを習得すること、思考の枠組みや行動様式そのものを変化させることなどをどのように実現すればよいか試行錯誤していた時期がある。また、仕事の目的をより良く達成する手段を選択することや、ムダを排除するために創意工夫することを組織として学習するにはどうしたらよいか試行錯誤していた時期がある。どちらも在職中に満足できる結果を残すことはできなかったと自省している。
今あらためて「訓練の最大の成果は、新しいことを学ぶことではなく、すでにうまくいっていることをさらにうまく行うべく、みずから継続して学習することによってもたらされる。(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2017年7月号)」というドラッカーの言葉に触れて、私の視野がまた少し広がったように感じている。