ブログ営業活動

6回シリーズでお届けする“新規開拓営業のコツ”。第3回目は『初回精査』についてご説明いたします。

 

その1.事前準備
その2.アポイントの取り方
その3.初回精査
その4.2回目以降の訪問
その5.クロージング
その6.アフターフォロー

 

 

“初回精査”というと、耳馴染みが無い方が多いかもしれません。端的に言うと、“初回訪問時に相手の情報を詳しく聞き出す”という意味です。単なる“初回訪問”と区別しているのは、必要な情報を聞き出さないで「こんにちは。さようなら」で帰ってきてしまっては、何も意味が無いからです。

 

1.ヒアリング項目を整理しておく
訪問前にヒアリング項目を整理しておきましょう。このとき気を付けたいのは、“初回精査で何を聞くか”ではなく、“契約締結までに、あるいはそれ以降も含め、何を把握しておかなければならないか”です。取扱商品や業種によって詳細は異なりますが、最低限抑えておきたいのは、決定権者、キーマン、決済ルート、購入時期、決算期、競合商品の利用状況、主要取引先、業務フロー、顧客の抱える問題・課題等です。当然、初回訪問時に全てを聞き出すことは困難です。訪問回数を重ねながら聞き出していく必要があります。一般的には、自社の商品を売り込みたいがために、競合商品の利用状況のヒアリングに注力される方が多くいらっしゃいます。競合の把握は勿論重要なのですが、それよりも決定権者やキーマン、決済ルート或いは、業務フローや顧客の課題等のヒアリングに傾注すべきです。決定権者とキーマンは一見、同じに思えるかもしれませんが、実態は大きく異なります。決定権者とは、最終的に契約締結にGOサインを出せる人間で、キーマンとは、この決定権者の信頼が厚く、決定権者の意思決定に大きく関与できる人間のことです。規模の小さな企業であれば、決定権者とキーマンが同一である場合もありますが、それなりの規模の組織となると別々に存在します。また、アポイントを取って最初に会った担当者が、このキーマンであれば話は早いのですが、通常この“キーマン”は組織内でも優秀で多忙であることが多く、直ぐに会えるとは限りません。“キーマン=担当者”ということもありますが、組織の規模が大きくなると、“担当者”とは専らその分野の事務処理を担当する者という形で位置付けられ、キーマンとは異なることが多いです。事務担当者との関係強化を深耕しても、キーマンを押さえなければ、契約締結には至りませんので、2回目以降の訪問で如何にキーマンに会うかを模索しなければなりません。そのためには、より顧客ニーズの核心に近い会話をしなければならず、核心に迫るために業務フローや顧客課題等のヒアリングを行うのです。

 

2.ストーリーを意識する
初回精査に限りませんが、面談の際はストーリーを意識して会話をする必要があります。いくら顧客の情報を入手したいからといっても、相手を質問攻めにして、尋問のような聞き方をしてしまっては不快感を与えるだけです。自分が把握したい情報を聞き出すには、どのような会話のキャッチボールをすれば良いか、予め数パターンのシミュレーションをしておくと良いでしょう。『アポイントの取り方』の回でも“練習は大切です”とお伝えいたしましたが、顧客面談時も同様です。“何か宿題を持って帰る”ことを意識すると、ストーリーも組み立て易く、コミュニケーションも円滑に図れるでしょう。次に繋げることを意識しましょう。
ヒアリング手法等のコミュニケーションスキルに関しては、別稿で触れたいと思います。

 

3.悪い印象を与えない
これも当然のことなのですが、初回面談時には特に気を付けたい点です。人間は第一印象がとても重要です。“人は見かけで判断するな”とは言うものの、人には“人を見かけで判断してしまう”習性があるのです。これをメラビアンの法則と言います。メラビアンの法則の説明については、コミュニケーションスキルの稿に譲りたいと思います。
初見の相手に抜群に良い印象を与えるというのは至難の業です。しかし、“悪い印象を与えない”という程度であれば努力の範囲です。身だしなみや言葉づかい等、ビジネスマンとして最低限のマナーを遵守しましょう。

 

 

ポイント1に文量が偏ってしまいましたが、全編通して重要な箇所ですので、押さえていただければと思います。次回は『2回目以降の訪問』についてご説明いたします。

 

 

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新規開拓営業のコツ その3~初回精査~【産業 学】

2011/12/26
産業 学 

6回シリーズでお届けする“新規開拓営業のコツ”。第3回目は『初回精査』についてご説明いたします。

 

その1.事前準備
その2.アポイントの取り方
その3.初回精査
その4.2回目以降の訪問
その5.クロージング
その6.アフターフォロー

 

 

“初回精査”というと、耳馴染みが無い方が多いかもしれません。端的に言うと、“初回訪問時に相手の情報を詳しく聞き出す”という意味です。単なる“初回訪問”と区別しているのは、必要な情報を聞き出さないで「こんにちは。さようなら」で帰ってきてしまっては、何も意味が無いからです。

 

1.ヒアリング項目を整理しておく
訪問前にヒアリング項目を整理しておきましょう。このとき気を付けたいのは、“初回精査で何を聞くか”ではなく、“契約締結までに、あるいはそれ以降も含め、何を把握しておかなければならないか”です。取扱商品や業種によって詳細は異なりますが、最低限抑えておきたいのは、決定権者、キーマン、決済ルート、購入時期、決算期、競合商品の利用状況、主要取引先、業務フロー、顧客の抱える問題・課題等です。当然、初回訪問時に全てを聞き出すことは困難です。訪問回数を重ねながら聞き出していく必要があります。一般的には、自社の商品を売り込みたいがために、競合商品の利用状況のヒアリングに注力される方が多くいらっしゃいます。競合の把握は勿論重要なのですが、それよりも決定権者やキーマン、決済ルート或いは、業務フローや顧客の課題等のヒアリングに傾注すべきです。決定権者とキーマンは一見、同じに思えるかもしれませんが、実態は大きく異なります。決定権者とは、最終的に契約締結にGOサインを出せる人間で、キーマンとは、この決定権者の信頼が厚く、決定権者の意思決定に大きく関与できる人間のことです。規模の小さな企業であれば、決定権者とキーマンが同一である場合もありますが、それなりの規模の組織となると別々に存在します。また、アポイントを取って最初に会った担当者が、このキーマンであれば話は早いのですが、通常この“キーマン”は組織内でも優秀で多忙であることが多く、直ぐに会えるとは限りません。“キーマン=担当者”ということもありますが、組織の規模が大きくなると、“担当者”とは専らその分野の事務処理を担当する者という形で位置付けられ、キーマンとは異なることが多いです。事務担当者との関係強化を深耕しても、キーマンを押さえなければ、契約締結には至りませんので、2回目以降の訪問で如何にキーマンに会うかを模索しなければなりません。そのためには、より顧客ニーズの核心に近い会話をしなければならず、核心に迫るために業務フローや顧客課題等のヒアリングを行うのです。

 

2.ストーリーを意識する
初回精査に限りませんが、面談の際はストーリーを意識して会話をする必要があります。いくら顧客の情報を入手したいからといっても、相手を質問攻めにして、尋問のような聞き方をしてしまっては不快感を与えるだけです。自分が把握したい情報を聞き出すには、どのような会話のキャッチボールをすれば良いか、予め数パターンのシミュレーションをしておくと良いでしょう。『アポイントの取り方』の回でも“練習は大切です”とお伝えいたしましたが、顧客面談時も同様です。“何か宿題を持って帰る”ことを意識すると、ストーリーも組み立て易く、コミュニケーションも円滑に図れるでしょう。次に繋げることを意識しましょう。
ヒアリング手法等のコミュニケーションスキルに関しては、別稿で触れたいと思います。

 

3.悪い印象を与えない
これも当然のことなのですが、初回面談時には特に気を付けたい点です。人間は第一印象がとても重要です。“人は見かけで判断するな”とは言うものの、人には“人を見かけで判断してしまう”習性があるのです。これをメラビアンの法則と言います。メラビアンの法則の説明については、コミュニケーションスキルの稿に譲りたいと思います。
初見の相手に抜群に良い印象を与えるというのは至難の業です。しかし、“悪い印象を与えない”という程度であれば努力の範囲です。身だしなみや言葉づかい等、ビジネスマンとして最低限のマナーを遵守しましょう。

 

 

ポイント1に文量が偏ってしまいましたが、全編通して重要な箇所ですので、押さえていただければと思います。次回は『2回目以降の訪問』についてご説明いたします。

 

 

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創業のきっかけ 【岩本 亨】

2011/12/05
岩本 亨

大震災や円高など、激動の年であった今年も残すところ1ヶ月となりました。皆さんにとっては、どのような年でしたでしょうか?

先日、一年を振り返ってみようと、今年のスケジュールを見返していました。9月のページの「決算」の文字を見て、改めて4期目が終わったことを確認し、創業のきっかけを思い出しました。

弊社は、平成19年10月2日設立です。5期目に入ったばかりの若い会社です。もともと私自身、「社長になりたい!」という強い意志を持っていたわけではありません。大きく二つのことがきっかけでした。

一つは、「中小企業診断士」として活躍したいと思ったこと。もう一つは他者に依存するのではなく、自らの手で獲得した仕事をしたいと思ったことです。

「中小企業診断士」という資格は、「唯一の経営コンサルタントの国家資格」と言われたりもしますが、どちらかというとマイナーな部類に入る資格だと思います。資格を目指す方々の多くは、何らか「中小企業のお役に立ちたい」との思いを持っていますが、資格を取得しても、その思いを十分に実現している人は少ないようです。それどころか一部の中小企業診断士は、「食えない資格」と自らを卑下するようなことを言っています。

そんな現実を目の当たりにして、「そんなはずはないだろう」と違和感を持ちました。数は少なくても、実際に活躍している人がいること。「食えない資格」と言っている人に限って、積極的な活動をせず、待ちの姿勢で仕事をしているように見えたこと。この二つの理由からです。

私自身が「中小企業診断士」として、中小企業のお役にたつことができれば、「食えない資格」という人が減るかもしれない。そして同じ志を持った人が集まって切磋琢磨すれば、少しでも日本経済の発展に貢献できるのではないか(ちょっと大げさですが・・・)。そんな場として会社を活用したいと思ったのです。

もう一つきっかけとしてあげた「他者に依存しない」は、会社設立の前、会社を辞めて独立して、個人事業主として仕事をしていた際に痛感したことです。いろいろな仕事をしていましたが、研修会社等からの研修講師の仕事も受託していました。今思えば、仕方ないと思う部分もありますが、例えば、研修日として仮押さえをされたまま1ヶ月以上経過しているのに何の連絡もなく、こちらから確認して初めて、その研修が失注していたことが分かった・・・などということが何回かありました。いろいろな理由はあるでしょうが、他者に依存している限りは避けられません。不満を口にしても解決しませんが、自分で仕事を獲得してくればこんな目には遭いません。幸い前職で営業活動をして、そこそこの実績を上げていましたので、できる自信もありました。そうすることで、上述の中小企業診断士が活躍できる場の活性化にもつながるだろうとの思いもありました。

会社設立して5年目に入って、だんだん思いが実現してきました。中小企業診断士に限らず、司法書士や社会保険労務士等々の方々が集まってきてくれています。今後も地道な活動を積み重ねて、創業の思いを一つでも多く実現していきたいと思っています。

新規開拓営業のコツ その2~アポイントの取り方~【産業 学】

2011/11/28
産業 学 

6回シリーズでお届けする“新規開拓営業のコツ”。第2回目は『アポイントの取り方』についてご説明いたします。

 

その1.事前準備

その2.アポイントの取り方

その3.初回精査

その4.2回目以降の訪問

その5.クロージング

その6.アフターフォロー

 

 

アポイントを取る手段は、①電話②メール③手紙(封書)などが考えられます。最も手軽で一般的なのは、電話ですね。メールも手軽ではありますが、先方のメールアドレスを正しく把握している必要があります。新規開拓先で、これから初めてお会いする方のアドレスを事前に入手するというのは、なかなか難しい話です。手紙(封書)も大変有効な手段ですが、メール同様ご担当者の部署やお名前を事前に把握するのは非常に困難です。本稿では電話でのアポイントを中心にご説明いたします。

 

1.原稿を用意しておく

個人差はあるかもしれませんが、多くの人は電話で見ず知らずの人と会話をする際、非常に緊張します。それほど緊張しなくても、淀みなく言葉が流れ出るようになるまでには、相当な“慣れ”が必要です。また、行き当たりばったりでは、本当に相手に伝えたいことも、なかなか伝えることができません。お客様に直接お会いしてお話をするのであれば、相手の顔色を見ながら会話を進めることもできますが、電話となるとそれもままなりません。そこで、電話ならではの見えないというメリットを活かして“原稿を読む”という方法が考えられます。先方はこちらの様子が見えませんので、原稿を読み上げているか否かは、なかなか分かりません。勿論棒読みにならないように十分に練習をする必要があります。練習に関しては次節以降で触れます。

原稿といっても、一言一句文章にする必要はありません。伝えたいことや、お聞きしたいことを予めメモとして書き出しておくだけでも有効です。

 

2.ゴールを明確にする

“原稿を用意する”に付随しますが、ゴールの設定は非常に重要です。テレアポ(電話でのアポイント)経験談でよく耳にするのが、「電話をかけても相手にされない」「すぐ切られた」「話を聞いてくれないので凹んだ」「全くアポイントが取れない」などです。多かれ少なかれ、営業マンであればこのような経験があると思います。先方からすれば、“見ず知らずの人間が、こちらの都合も考えずにいきなり電話をしてくる”わけですから、自分たちには不要と判断されれば、無碍な扱いをされても致し方ありません。ですので、電話に出た方に“不要”と思われないような投げかけをすることによって、いわゆるガチャ切りを回避することができます。それがゴールの設定ですね。正確にはゴールへの道筋といった方が良いかもしれません。“テレアポだからアポイントを取るのがゴールではないの?”と思われる方も多いと思いますが、大事なのはその先です。そもそも何のためにアポイントを取るのかといえば、お客様と商談をして、ご契約をいただき、継続的なお取引をいただくためです。ですので、初回の電話掛けでは、アポイントが取れれば何よりですが、それ以外にも今後の取引に必要な様々な情報を聞き出すことが肝要です。具体的には、担当部署・担当者は当然のこと、提案したい商品に対するニーズ・競合商品の利用状況から、会社の方針・経営者の考え方、などです。当然、これらはいきなり聞こうとしても、直ぐに教えてもらえないケースが殆どです。まずは、“自社がどういう会社で、今後どのようなお付き合いをしていきたいか”を伝えることで、上記の情報は聞き出しやすくなります。最近は、多くの企業が自社HPを持っているので、会社の方針等はアタリが付けられます。“この電話は切ってはいけないな”と感じていただけるような会話が重要ですね。

 

3.練習する

練習は大事です。余程の熟練者でないかぎり、電話で意のままに思いを伝えるということはできません。コミュニケーションというものは、存外難しいものです。逆に、熟練者といわれる方ほど、人知れず努力を積み重ねています。

練習のときの注意点は、①声色、②スピード、③相手の出方です。電話での声は、通常よりも低めに伝わると言われています。日常会話程度の声高で話すと「暗い」「怖い」印象を与えてしまう可能性があります。とは言え、必要以上にハイテンションで会話をすると、五月蠅い印象を与えてしまいます。テレアポ専門のアルバイトがキンキンした声でかけてきた電話を受けた経験のある方も多いと思います。文章ではちょっと表現しにくいですが、目安は“ちょっと気取った嬉しそうな声”です。“嬉しそうな”というのがポイントですね。恐らく自然と朗らかな表情になっていると思います。周囲からは「楽しそうに仕事をしているな」と思われるか「気持悪い」と思われるか、その辺は気にしないようにしましょう。“私は貴方とお話ができて非常に嬉しい”という好意を、相手に伝わるように声色で表現するのです。会話のスピードも同様です。人間は緊張すると、ついつい早口になってしまいがちです。逆に、忙しいときにゆっくり話されても苛々が募るだけです。“早すぎず、テンポよく、歯切れよく”がポイントですね。

自分の電話の声を自分で聞く機会はなかなかないので、①②は難しいと思いますが、“普段話している相手に聞いてみる”“留守番電話に吹き込んで聞いてみる”などしてみても良いかもしれません。

“③相手の出方”は、電話掛けに限らず、営業トーク全般に通ずる要素です。電話の場合は、この“相手の出方”が非常に想定しやすいので、営業トークを磨く良い練習にもなります。

例を挙げてみます。

電話に出た方が、A:自分がアポイントをいただきたい方 or B:それ以外の方 では対応が異なります。

Aであれば、己が何者であるか、訪問の目的などを端的に伝え、アポイントを頂戴すれば良いですが、Bの場合は、ご担当者の部署やお名前を聞き出す必要があります。また、居留守を使われている可能性もありますので、その際は、Bの方では判断に困る、或いはBの方以外に取り次いで判断を仰ぎたくなるような投げかけをすると効果的です。“○○について分かる方”や“○○のご案内をする際には、どなた宛に差し上げればよいか”などの文句は比較的有効です。

お目当ての方が直接電話にでることは少ないと思いますので、如何にB→Aの流れを掴むかが肝要となります。

 

 

少し長くなってしまいましたが、要約すると“相手を思いやる”ということですね。逆の立場で考えると分かり易いと思います。忙しい時に突然、会ったこともない人間から電話があったら、どういう印象を抱くか、どのような会話をしたら、快く対応できるか、ご自身の経験も踏まえてご一考いただくと良いかと思います。

 

次回はアポイント取得後の初回精査についてご説明いたします。

 

 

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畳屋さんの地道な営業活動に感動! 【岩本 亨】

2011/11/07
岩本 亨

マンション住まいながら、畳が好きで、洋室を改装して和室をつくり、寝室にしている。田舎の古い日本家屋で生まれ育ったことに起因しているのだと思う。

 

ひと月ほど前、その和室の畳表を張り替えた。玄関を入ると、青畳の匂いがして、心地好い。

畳を入れて以来、10年近く何の手入れもしてこなかった。さすがに畳表がささくれて、衣服に付いてしまうのが気になり始めていた。

 

そんな二年ほど前のある土曜日のお昼前、電話が鳴った。たまたま受話器を取った私に、50代だろうか?女性の穏やかな声で、「畳屋ですが、和室はありますか?」「何年住んでいますか?」「畳表の張替はされてますか?」とごく自然に聴かれた。ついつい状況を素直に話していた。

 

電話のセールスだと、「隙があれば売り込むぞ!」と言わんばかりに、比較的若い方から掛かってくることが多い。私自身、長く営業に携わっているため、すぐにチェックモードになってしまう。ぞんざいな応対をすることが多く、ろくに話も聞かず、受話器を置くことがほとんどだ。

ところが、この女性は違っていた。聴き方が良かったのだろうか、やさしく諭すような雰囲気も醸していた。その時は、外出直前だったこともあり、それ以上の話はできなかったが、興味があることは伝わったと思う。

 

しばらくするとその電話のことは忘れてしまっていたが、畳の状態はまた徐々に悪化し、気にもなっていた。

半年ほど後、また電話がかかってきた。おなじ女性だった。「その後、如何ですか?」「見積もりは無料だからさせてもらえませんか?」と聞かれたが、その時も時間がなく、連絡先を聞いて電話を切った。

 

そしてまた半年後、「如何ですか?」の電話。「ちょうど、もう限界だなって思っていたんですよ」と答えていた。それからすぐに見積もりをしてもらい、ひと月もたたないうちに、張り替えが完了した。

見積もりをしてくれた職人さんに、この女性のことを尋ねたところ、3人くらいの方が事務仕事の合間を縫って、電話かけをされているとのこと。リストアップは電話帳から。かけて反応のあったお宅を、丁寧にフォローされているようだった。

 

電話営業を経験された方ならお分かりだと思うが、100件電話して2~3件好反応があればよい方で、多くの場合、セールスとわかった途端に切られてしまう。悪くすれば罵声まで浴びせられてしまう・・・。電話を掛ける方も心が荒み、応対に余裕がなくなり、嫌でたまらなくなる。そんな人からもらう電話が、受け手に心地好いわけがなく、悪循環に陥ってしまう。

しかも、次から次へと新しい電話帳を使うため、情報が蓄積されない。それを補完するための様々なソフトウエアも販売されているようだ。

私はそれを否定はしないが、営業の基本は営業担当者が地道な努力を、正しく積み重ねられるかどうかにあると考えている。

 

営業研修で講師をする際も、そんな考え方をベースにお話しする。受講された方のアンケートで、「精神論に過ぎない!」とコメントされることもある。

何か理解してもらうための良い具体例がないものか?と思っていたが、これからは「畳屋さんの営業の女性がね・・・」と説明してみようと思う。

 

今日も帰宅して青畳の匂いを嗅ぎ、その営業の見事さを思い出し、皆さんにもお伝えしたくなった。