吉田健司
10年程前になるが、意思決定でよく見受けられる心理的な罠について社内向けにコラムを書いたことがある。参考にした書籍は、意思決定アプローチ「分析と決断」(1999年初版 ジョン・S・ハモンド/ラルフ・L・キーニー/ハワード・ライファ著 小林龍司訳 ダイヤモンド社)である。
この書籍は、第10章で11種類の心理的な罠を取り上げている。「目につくことしか見ない、自己正当化の罠」、「過去の意思決定を正当化したうえで現在の意思決定を考える、過去の支出の罠」、「選択肢の数が多いほど現状維持が好まれる、現状維持の罠」など、日常身近で見聞きするような心理的な罠もあり、それらの回避テクニックは大変勉強になったと記憶している。
最近、あらためて興味のある部分を読み直したところ、新たな気づきがあった。それは、「現状を変えるのに必要とされる労力やコストを大げさに考えない」というテクニックについてである。以前は読み流していたフレーズである。
当時の私は、現状を変えるためには、まず人からだと考え、どうやったら変われるかという視点で考えていた。国分康孝著「自分を変える心理学」(PHP文庫)を愛読し、自分を変える3要素「思考・感情・行動」の話をたびたび紹介したりしていた。
今回の気づきは、なぜ変われないかの視点も重要ということである。どうやったら変われるかを考えることの大切さを伝える前に、なぜ変われないかを深掘りすることを伝えた方が良かったのではと自省している。前回テーマとした「メタ認知」をもっと取り入れていかなければと思う今日この頃である。
心理的な罠 吉田健司
吉田 健司
10年程前になるが、意思決定でよく見受けられる心理的な罠について社内向けにコラムを書いたことがある。参考にした書籍は、意思決定アプローチ「分析と決断」(1999年初版 ジョン・S・ハモンド/ラルフ・L・キーニー/ハワード・ライファ著 小林龍司訳 ダイヤモンド社)である。
この書籍は、第10章で11種類の心理的な罠を取り上げている。「目につくことしか見ない、自己正当化の罠」、「過去の意思決定を正当化したうえで現在の意思決定を考える、過去の支出の罠」、「選択肢の数が多いほど現状維持が好まれる、現状維持の罠」など、日常身近で見聞きするような心理的な罠もあり、それらの回避テクニックは大変勉強になったと記憶している。
最近、あらためて興味のある部分を読み直したところ、新たな気づきがあった。それは、「現状を変えるのに必要とされる労力やコストを大げさに考えない」というテクニックについてである。以前は読み流していたフレーズである。
当時の私は、現状を変えるためには、まず人からだと考え、どうやったら変われるかという視点で考えていた。国分康孝著「自分を変える心理学」(PHP文庫)を愛読し、自分を変える3要素「思考・感情・行動」の話をたびたび紹介したりしていた。
今回の気づきは、なぜ変われないかの視点も重要ということである。どうやったら変われるかを考えることの大切さを伝える前に、なぜ変われないかを深掘りすることを伝えた方が良かったのではと自省している。前回テーマとした「メタ認知」をもっと取り入れていかなければと思う今日この頃である。
メタ認知 吉田健司
吉田 健司
「メタ認知」を調べてみた。「認知心理学」の本などでは「メタ認知」は、「認知に対する認知」のことであると解説されている。心理学者の伊藤進氏は、「メタ認知」について次のように説明されている。「メタ認知」とは、一言でいうと「自分の認知活動を認知する機能」である。認知活動とは、脳が行うさまざまな情報処理活動である。知覚、記憶、思考、問題解決、それに諸種の課題の遂行である。(伊藤進著<聞く力を鍛える>講談社現代新書)
「デジタル大辞泉の解説」によると自分の行動・考え方・性格などを別の立場から見て認識する活動である。
自分の行動・考え方・性格などを別の立場から客観的に見て認識することは、自分自身へのモニタリングといえる。例えば、自分が実行したいこと、達成したいこと、なりたい自分について、目標を立てて、計画を作り、実行して、評価する。これらを繰り返し、実現に近づく自己管理のPDCAは、リソースとしてのメタ認知力が重要な要素ではないかと思う。
私は、日常「メタ認知」という言葉を意識することはあまりないが、「自省」という言葉は常に意識している。専門的なことはよくわからないが、「自省」を自分の言動を自ら反省することと解釈すると、メタ認知の結果が自省につながると考えてよいのだろうか。
そのように考えると、自分のメタ認知力を知ることや、メタ認知のトレーニングを行うことは、人材育成に欠かせないものではないかと思えてくる。自分を常に意識して客観的に見ている人はそれほど多くないのではないだろうか。メタ認知力を改善することで、成長を阻んでいた見えない壁を乗り越える人もいるかもしれない。
「キャリア健診」に思うこと 吉田健司
吉田 健司
今回は「キャリア健診」をテーマとする。私は「キャリア健診」を経験したことはないが、厚生労働省の委託で平成23年3月に公益財団法人日本生産性本部が作成した「キャリア健診マニュアル」を読んで興味を持った。
「キャリア健診」の目的は、企業における人材育成の現状を把握し、従業員へのキャリア形成支援を促すとともに、個々の従業員に対してキャリア形成意識を喚起することで、企業と従業員のより良い共生関係の構築に資することとされている。見方を変えると、企業が従業員へのキャリア形成支援を考える際の手本となると思う。
「キャリア健診」では、キャリア・コンサルタントが企業に対して、従業員へのキャリア形成支援に関する提案・アドバイスを行うが、その材料となるのは、企業と従業員へのアンケート、人事担当者等へのヒアリング、従業員へのカウンセリングなどである。
企業に関するアンケートは、企業におけるキャリア形成支援の現状と今後について、①キャリア目標の設定、②キャリア形成支援、③職場のサポート、④キャリア形成の自律性、⑤働き方の裁量性の5つの領域で20の設問が用意されている。このアンケートは、企業と従業員に同じ質問をすることで、両者の意識や考え方の共通性と相違等の関係を把握するように設計されている。
また、従業員に関するアンケートは、従業員の仕事と生活に対する意識、態度、行動について、①職務意識、②自分のことを知っている度合い、③将来のイメージ、④現在と将来に向けての取り組み、⑤身体と心の健康、⑥仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の6つの領域で45の設問が用意されている。
このうち企業に関するアンケートにおいて、企業と従業員に同じ質問を行い、両者の意識や考え方の共通性と相違等の関係を把握する手法は、中小企業診断士として、企業の経営診断を行う際に、経営者と従業員に対して行う意識調査の意図に通じるところがあるため、私は興味を持った。
また、企業におけるキャリア形成支援に関する第1の設問「会社の経営理念に基づいた「求める人材像」が明確に示されている」は、私が経営革新のサポートを行っている顧問先で、重要テーマの一つとして取り組んでいることである。「求める人材像」を明確に示しているか、「求める人材像」は従業員にとって明確になっているか、両側面から考えてみることをお薦めする。
私にとってのコーチング 吉田健司
吉田 健司
思い立ってコーチングの意味をインターネットで調べてみた。コーチングは、能力開発法、人材育成の技術、社員育成技法、育成方法論、コミュニケーションスキル、自己改善技術など、いろいろな視点で解説されている。いくつかの解説を読んで見たが、コーチングの意味を一言で説明するのは難しいと感じた。
私がコーチングに興味を持ち、PHP研究所のゼミナールに参加してから16年が過ぎようとしている。16年前に私が受講した研修は、PHPコーチング基本コース(一日コース)で、会社勤めをしていた私は、有給休暇を使って自費参加したが、受講者は企業の人事担当者、士業、コンサルタントなどで、自己啓発での参加者は私ぐらいだったと記憶している。
受講をきっかけに、社内にコーチングを紹介したいと考えるようになり、少し苦労をしたが何とか予算を確保し、PHP研究所のプロコーチを招いて所属部門内の管理職向けにコーチング研修を実施した。また、私自身も講師としてコーチング研修を実施し、一人でも多くの人にコーチングを知ってもらい、興味を持ってもらい、自ら学んで欲しいと、メッセージを投げかけてきた。
私は、全員がコーチであり、全員がクライアントであって欲しいと思っている。また、自分が自分のコーチであって欲しいとセルフ・コーチングを薦めてきた。
「自分は自分で変えられる「理想のあなた」になるセルフ・コーチング」(PHP研究所)の著者小野仁美氏は、「コーチは、相手が自ら物事を考え、自ら学び、自ら力強く行動していくことをサポートしていきます。」と述べている。私がこの言葉に出会ったのは2002年。以来、自分で考えない、学ぼうとしない、動かない部下・同僚・先輩・上司などにコーチとしてサポートできることはないか、考えるように努めてきた。
コーチングという言葉を、日常見聞きすることが多くなった今、私は、自己改善のスキルとして、コーチングに向き合うことをお薦めしたい。
労働法の基礎知識も大切だと思う 吉田健司
吉田 健司
長時間労働が疑われる 10,059 事業場に対して、労働基準監督署が平成28年4月から9月までに実施した監督指導の結果が、厚生労働省から今月公表され、66.2%の事業所で労働基準法などの法令違反があった。この公表を読んで、企業に勤めていたころ、職場で労働法の研修講師を務めたことを思い出した。基礎的な知識を学習する研修であったが、労働法を理解しておくことは、労働者が自身の権利を守ることにつながるので、有意義な研修だったと自負している。
身近な例として、通勤を考えてみたい。一般に労災保険と呼ばれている労働者災害補償保険では、労働者の通勤による負傷、疾病、傷害又は死亡を、通勤災害として保険給付の対象としている。労災保険の通勤の定義は、保険給付の有無にかかわる重要事項である。
例えば、通勤に該当する移動のひとつに、住居と就業の場所の往復がある。就労に関して、この移動を合理的な経路及び方法で行う場合を、業務の性質を有するものを除き通勤というが、次のような特別な決まりがある。
① 合理的な通勤経路を逸脱・中断した場合は、合理的な通勤経路から逸脱・中断の間と、合理的な通勤経路に復帰後の移動の間は、通勤と認められない。
② 日常生活上必要な行為のために、合理的な通勤経路を逸脱・中断した場合は、合理的な通勤経路に復帰後の移動の間は、例外的に通勤と認められる。
この例のように、一般的常識的な範囲に加えて、もう少し広く深く理解しておきたいテーマは多々あると思う。ただ、労働法は、労働基準法・最低賃金法・職業安定法・労働者災害補償保険法・労働組合法など労働に関する法律の総称で、法律の数は多く効率的に学習するのが難しいかもしれない。まずは、厚生労働省が、就職を控えた学生や若者向けに作成した『知って役立つ労働法~働くときに必要な基礎知識~』などを活用して概要を学習することをお薦めしたい。