ブログ吉田健司

先日、上野の東京国立博物館平成館で開催されていた特別展「始皇帝と大兵馬俑」を鑑賞してきた。私は、古代中国の歴史や思想に関する本を好んで読んでいるので、大変興味深く意味のある時間を過ごすことができた。
自称企業戦士だったころ、私は中国の古典の中でも特に「韓非子」の愛読者だった。「韓非子」は、韓の王族に生まれ、荀子に学んだ韓非の著作とされる。中国古代の法家思想の代表的な書で、韓非は法治主義による政治改革を秦の始皇帝に説き、始皇帝の法思想に影響を与えたとされる。
「韓非子」は、人間学の書ともいわれる。君主が大衆を支配するための説からは、「人」について多くを学ぶことができる。人間は自分の利益を追求する存在であるという韓非の非情な人間観から学ぶことも多い。
君主の心得、君主が臣下を充分に働かせる要点、臣下の任用と待遇についての注意、君主に対して人臣がおこなう八つの悪事、破滅に至る十の過ち、重臣の専横がはびこる体制への批判、国が亡ぶ兆候、歴史故事などへの非難、世間で賞賛される八種の人物への批判、学者・雄弁家などへの批判、権力者に進言するその説き方の難しさなどを説いていて、人の集まりである企業、変化する時代に直面している企業の経営に多くの示唆を与えてくれると思う。
「韓非子」を出典とすることわざなども興味深い。守株(しゅしゅ)、あるいは株を守るは、古い習慣に捉われて時勢に応じた対処のできないことのたとえとされる。 ある時、農夫が畑を耕していると兎が切り株にぶつかって死んだので、農夫は難なく兎を得ることができた。 それ以来、仕事をせずに再び兎が切り株にぶつかるのをいつまでも待っていたという故事から。
現実を鋭く見つめる「韓非子」は、一読する価値のある書であると思う。

韓非子を読む 吉田健司

2016/02/21
吉田 健司

先日、上野の東京国立博物館平成館で開催されていた特別展「始皇帝と大兵馬俑」を鑑賞してきた。私は、古代中国の歴史や思想に関する本を好んで読んでいるので、大変興味深く意味のある時間を過ごすことができた。
自称企業戦士だったころ、私は中国の古典の中でも特に「韓非子」の愛読者だった。「韓非子」は、韓の王族に生まれ、荀子に学んだ韓非の著作とされる。中国古代の法家思想の代表的な書で、韓非は法治主義による政治改革を秦の始皇帝に説き、始皇帝の法思想に影響を与えたとされる。
「韓非子」は、人間学の書ともいわれる。君主が大衆を支配するための説からは、「人」について多くを学ぶことができる。人間は自分の利益を追求する存在であるという韓非の非情な人間観から学ぶことも多い。
君主の心得、君主が臣下を充分に働かせる要点、臣下の任用と待遇についての注意、君主に対して人臣がおこなう八つの悪事、破滅に至る十の過ち、重臣の専横がはびこる体制への批判、国が亡ぶ兆候、歴史故事などへの非難、世間で賞賛される八種の人物への批判、学者・雄弁家などへの批判、権力者に進言するその説き方の難しさなどを説いていて、人の集まりである企業、変化する時代に直面している企業の経営に多くの示唆を与えてくれると思う。
「韓非子」を出典とすることわざなども興味深い。守株(しゅしゅ)、あるいは株を守るは、古い習慣に捉われて時勢に応じた対処のできないことのたとえとされる。 ある時、農夫が畑を耕していると兎が切り株にぶつかって死んだので、農夫は難なく兎を得ることができた。 それ以来、仕事をせずに再び兎が切り株にぶつかるのをいつまでも待っていたという故事から。
現実を鋭く見つめる「韓非子」は、一読する価値のある書であると思う。

机の上を片付けよう!! 吉田健司

2016/01/25
吉田 健司

ある企業の社長との5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)の話をきっかけに、私は会社に勤めていたころの経験を思い出した。
スペースの限られた机の上に複数の書類を広げて様々な作業を行う、並行して電話による照会・説明・交渉などを行う、あるいは相談・打合せなどを行う日々が続くうちに、いつの間にか机の上に書類の山ができてしまう。整理整頓を心がけているつもりでも、なかなか根本的な解決ができない。書類がたまる。仕事が遅いといわれる。はやる気持ちが仕事の質を低下させる。そんな悪循環に陥った経験はないだろうか。
このような状態を改善するヒントを、私は生産管理のノウハウに見つけた。当時の仕事の流れは、大きく括ると新たな書類と手持ちの書類をあわせて内容を点検し上司決裁に廻すというもので、投入した原材料・仕掛品に加工・組立てなどで付加価値をつけ、次におくる工場の工程とよく似ていることに気が付いた。
以後、生産管理は非製造業に勤める私の学びのテーマとなった。特に、IE(インダストリアル・エンジニアリング)の手法が役に立つ。ムリ・ムダ・ムラを見つけて改善していくための科学的な手法のいくつかは、工場以外の様々な職場で活用できると考えている。

5Sは工場をきれいにすることが目的ではなく、現場改善であり、生産管理の改善の出発点であるともいわれる。あわせて職場環境の改善であると思う。労働安全衛生法の目的は、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することである。その労働安全衛生規則に「清潔」に関する条文がある。「事業者は、日常行う清掃のほか、大掃除を、それぞれ6か月以内ごとに1回、定期に、行わなければならない」とされている。清潔とは整理・整頓・清掃の維持であり、しつけとは決められたことをいつも正しく守る習慣のことであるから、5Sは生産管理面だけでなく職場環境面でも重要であると思う。

カテゴリー:  吉田健司, 経営情報

学びて、思いて、表して、習う 吉田健司

2015/12/29
吉田 健司

私は中小企業診断士の仲間と切磋琢磨する場である研究会に、8年前から参加している。今月は「仕事において大事にしていること、大事にしたいこと」をテーマに、16名が10分間スピーチにチャレンジした。私は「学びて、思いて、表して、習う」についてスピーチした。論語の「学びて、時に、これを習う(学び続け、常に復習する)」と、「学びて思わざれば則ちくらし(学習しても思考しなければ見識にかけ)、思いて学ばざれば則ちあやうし(思考するだけで学習しなければ誤りやすい)。」を、私なりにアレンジしたフレーズである。その意図するところのあらましを以下に述べたい。

最初の「学びて(学ぶ)」では、「観察」「体験」「読書」の三つを特に大切にしている。「観察」は広く目的をもって見るという意味で使っている。「体験」には、「百聞は一見に如かず」といわれるように、体験すること、経験すること、つまり行動、実行、実践といった実の部分から学ぶ意味を込めている。そして「読書」は日々最も大切にしていることある。単に知識を得るだけでなく、考えるきっかけを与えてもらっている。
次の「思いて」では、どこでもシンキングを意識し実践することを大切にしている。考えること、思考することは、いつでも、どこでもできる。ひらめきは思わぬところで生まれることを経験した方も多いだろう。
三つ目の「表しては」は自分自身へのアウトプットのことである。考えたこと、思いついたことなどを、いったん頭の中で整理する。整理しておくことで、また思い出して思考を深めたり、やり直したりできる。私はこの一連の思考の繰り返しを「頭のキャンパス」と名付けている。そして、良いひらめきを得た時や、納得のいく整理ができた時は、忘れないうちに「思いつきノート」に書き留めるように心がけている。

最後の「習う」には色々な意味がこめてある。継続すること、何度も繰り返すこと、復習することなど。「学ぶ、思う、表す」を繰り返す。繰り返すことで知識が身につき自分のものになっていく、いつでも活用できるようになる。絶えず復習することで熟練して上達する。このサイクルを回すことで、少しでも多くのことを自分の言葉で語れるようになりたいと、私は思っている。

カテゴリー:  人材育成, 吉田健司

中国の古典に思う 吉田健司

2015/11/23
吉田 健司

私は20年以上古代中国の古典を読み、関連する歴史を学び、古代中国を題材とした小説を楽しんできた。そして多くの仲間に古典を読むことを薦めてきた。一方で中国の古典を学ぶことの意味を考え続けてきた。
四書(大学・中庸・論語・孟子)五経(書経・易経・礼記・詩経・春秋)を中心とした儒教の書物だけでなく、老子、荘子、孫子、韓非子、戦国策、史記、三国志等から数多くの故事・名言・名句が生まれ、日本人にとって教養の源であり、貴重な人生訓・処世訓になっている。
一般的に語られている言葉をいくつか列挙してみたい。
「さまざまな状況で役立つ知恵、指針、助言などがから、視野が広がり、視点が変わる。」
「ビジネス社会を生きぬく知恵、人生の指針として役に立つ。」
「知性と感性を磨き、ゆたかな表現力を身につける助けとなる。」
「変化の時代を生きるための人間学といえる。」
「激しい変化の過程で人間を厳しくみすえている。」
私の経験からもうなずくことのできる言葉ばかりである。

私は企業に勤めていたころは、古代中国の古典のうち特に管子と韓非子を愛読していた。統治の書としての価値を感じており、春秋・戦国時代の君主と宰相の関係を現代の企業に当てはめて考える楽しみがあった。たとえば、経営者は企業の今後を左右する重要な決断をしなければならないが、経営上、もっとも頼りになる「右腕」となる人材をおくことによって、経営者が誤った判断をしたとしても正すことが可能になる(中小企業白書2005)。春秋・戦国時代の各国の君主と臣下の物語は、経営者と右腕の関係や、経営者と経営メンバーとの関係において、いろんな示唆や教訓を与えてくれる。
さらに春秋・戦国時代からは集団を動かすことを学ぶことができる。火器等の武器のない時代の戦争は人と人の戦い、人の集団の戦いの様相が鮮明で、戦争の物語は組織の行動学につながるものがある。勝者とは、俯瞰できるもの、時間的空間的に物事を捉えることのできるもの、情報収集に勝るもの、学習し思考を巡らし行動する質の高さで勝るものなどである。

カテゴリー:  人材育成, 吉田健司

リーダーシップを学ぶ 吉田健司

2015/10/26
吉田 健司

週刊ダイヤモンドの今週号にダイヤモンド社から発売されている本「伝説の外資トップが説く 仕事と人生で成功するために必要なこと」の1ページ広告が掲載されている。著者は新将命氏である。新将命氏は、私が定期的に繰り返し読んでいる本の著者である。広告を見た瞬間に、これは読む価値のある本だろうと思った。
私が再読している本は、「リーダーシップはどうすれば生まれるのか?」というタイトルで、三笠書房の知的生き方文庫の一冊である。第1刷発行は1995年12月10日とあるので、20年前に発行された本である。私が40代前半から数年に一度は読み返している理由は、著者が人を動かす前に自分を動かすことの大切さを述べているからである。自分自身のことはもちろんであるが、「自分を動かす」、「自分を変える」は、次のリーダーを育てるために重要なキーワードだと痛感していた私にとって、心強い味方を得た思いであった。同様の思いで大事にしている一冊がある。國分康孝著「自分を変える心理学」PHP文庫である。思考・感情・行動の自分を変える三つのツボの話がとても分かりやすく、いろんな機会をとらえて社内で発信していたものである。

かつて、リーダーシップについて知識が先か経験が先か思いを巡らせたことがある。リーダーシップは体系的に学んだり経験したりする機会が少なく、OJTを通して身につけていくことが多いのではないだろうか。OJTを通して身につけていくということは、結局自己流になるということではないだろうか。自己流がすべて悪いとは思わない。自分なりのリーダーシップを習得すること、持論を持つことは素晴らしいことだと思う。ただ、そのためには学び方が大事であろう。学ぶことと実践することを繰り返す、「学びて習う」を実践しなければならない。優れたリーダーシップを実践してきた方の持論を学べるという意味で、私は、「伝説の外資トップが説く 仕事と人生で成功するために必要なこと」を読む価値があると思ったわけである。